施設紹介
武蔵野大学附属幼稚園の魅力
武蔵野大学工学部建築デザイン学科では、例年新1年生が名建築を学ぶという目的で、幼稚園を見学しています。本コラムは、引率する教員による園舎の紹介です。
佐藤桂(建築デザイン学科准教授 建築史)
宮下貴裕(建築デザイン学科助教 都市計画)
風袋宏幸(建築デザイン学科教授 建築意匠)
武蔵野大学工学部建築デザイン学科では、例年新1年生が名建築を学ぶという目的で、幼稚園を見学しています。本コラムは、引率する教員による園舎の紹介です。
佐藤桂(建築デザイン学科准教授 建築史)
宮下貴裕(建築デザイン学科助教 都市計画)
風袋宏幸(建築デザイン学科教授 建築意匠)
はじめに
武蔵野大学附属幼稚園の園庭と園舎は、緑豊かな武蔵野キャンパス構内の奥まった一角にあります。南側の門から入ると、大きな樹木が影を落とす遊具のスペースがあり、その北側に広々と空に開かれた芝生のグラウンド、さらに大階段をのぼった北側の小高い場所に、打放しコンクリートのモノトーンな外観が印象的な、かわいらしい園舎があります。1990-91年に古い木造園舎を建て替えたもので、設計は日本を代表する建築家・原広司+アトリエ・ファイ建築研究所、施工は松井建設です。 (佐藤桂)
設計者について
原広司は1936年に川崎で生まれ、両親の郷里である長野県飯田市で育ちました。東京大学大学院在籍中の1960年代から設計を始め、その後半世紀にわたり、日本の建築界を牽引してきた著名な建築家です。当時、世界の建築家たちは、合理性・機能性を志向した近代建築が量産してきた「均質空間」に疑問を抱き始め、これを乗り越えるための新たな設計手法を模索していました。原は1970年代から20年以上をかけて世界の集落を踏査し、多様な集落形態の背後にある隠れた秩序や、積層する時間が生成する空間原理などに着目し、これを変化する「様相」と呼んで、デザインの根幹に採り込んでいきました。その代表作である田崎美術館(1986年)、ヤマトインターナショナル(1986年)、梅田スカイビル(1993年)などが立て続けに生み出された飛躍の時代に、武蔵野大学のグリーンホールと附属幼稚園も設計されています。(佐藤桂)
武蔵野大学附属幼稚園の園庭と園舎は、緑豊かな武蔵野キャンパス構内の奥まった一角にあります。南側の門から入ると、大きな樹木が影を落とす遊具のスペースがあり、その北側に広々と空に開かれた芝生のグラウンド、さらに大階段をのぼった北側の小高い場所に、打放しコンクリートのモノトーンな外観が印象的な、かわいらしい園舎があります。1990-91年に古い木造園舎を建て替えたもので、設計は日本を代表する建築家・原広司+アトリエ・ファイ建築研究所、施工は松井建設です。 (佐藤桂)
設計者について
原広司は1936年に川崎で生まれ、両親の郷里である長野県飯田市で育ちました。東京大学大学院在籍中の1960年代から設計を始め、その後半世紀にわたり、日本の建築界を牽引してきた著名な建築家です。当時、世界の建築家たちは、合理性・機能性を志向した近代建築が量産してきた「均質空間」に疑問を抱き始め、これを乗り越えるための新たな設計手法を模索していました。原は1970年代から20年以上をかけて世界の集落を踏査し、多様な集落形態の背後にある隠れた秩序や、積層する時間が生成する空間原理などに着目し、これを変化する「様相」と呼んで、デザインの根幹に採り込んでいきました。その代表作である田崎美術館(1986年)、ヤマトインターナショナル(1986年)、梅田スカイビル(1993年)などが立て続けに生み出された飛躍の時代に、武蔵野大学のグリーンホールと附属幼稚園も設計されています。(佐藤桂)
中庭と回廊が生むつながり
開放的な園庭から園舎に入ると、そこにも園児たちが様々な遊び体験を育む魅力的な屋外の空間が存在します。園舎の中央には、人工芝が張られた広々とした中庭があり、園児たちは太陽の光を浴びながら、水を使った遊びやものづくりに取り組んでいます。そして、それを囲む回廊は、屋根が設けられた半屋外空間であり、雨風をしのぐはたらきをしながらも、季節や天気の変化を肌で感じられるような空間となっています。屋内の保育室、半屋外の回廊、屋外の中庭など、性格の異なる個性的な空間がシームレスにつながり、園児たちが上履きのままで多様な遊びに取り組める魅力的な環境が生み出されています。(宮下貴裕)
部屋の数だけ世界がある
白い天井は、教室ごとに異なり、折り紙でデザインしたかのように、楽しく元気な形をしています。
一方で、黒い床は、落ち着いた知的な表情をしています。自然の光りが天窓から降りそそぎ、全体が空と地面からなる自然を連想させる教室です。園児の目線で眺めてみると、「部屋の数だけ世界がある」という設計者の言葉がとてもよく伝わってきます。この部屋の中で幼少の一時期を過ごすことは、「自然と響創する」という未来の世界で生きる感性を、豊かに育むに違いありません。(風袋宏幸)
開放的な園庭から園舎に入ると、そこにも園児たちが様々な遊び体験を育む魅力的な屋外の空間が存在します。園舎の中央には、人工芝が張られた広々とした中庭があり、園児たちは太陽の光を浴びながら、水を使った遊びやものづくりに取り組んでいます。そして、それを囲む回廊は、屋根が設けられた半屋外空間であり、雨風をしのぐはたらきをしながらも、季節や天気の変化を肌で感じられるような空間となっています。屋内の保育室、半屋外の回廊、屋外の中庭など、性格の異なる個性的な空間がシームレスにつながり、園児たちが上履きのままで多様な遊びに取り組める魅力的な環境が生み出されています。(宮下貴裕)
部屋の数だけ世界がある
白い天井は、教室ごとに異なり、折り紙でデザインしたかのように、楽しく元気な形をしています。
一方で、黒い床は、落ち着いた知的な表情をしています。自然の光りが天窓から降りそそぎ、全体が空と地面からなる自然を連想させる教室です。園児の目線で眺めてみると、「部屋の数だけ世界がある」という設計者の言葉がとてもよく伝わってきます。この部屋の中で幼少の一時期を過ごすことは、「自然と響創する」という未来の世界で生きる感性を、豊かに育むに違いありません。(風袋宏幸)
番外編コラム 「幼稚園バスのデザイン」
建築の学生たちと、かわいくて美味しそうなバスをデザインしました。ピンクの顔とグリーンのお尻、そしてグリーンの顔とピンクのお尻の2台です。それぞれ良く見ると、10種類の小さな組マークが園児の数だけ隠れています。遠くから眺めると新緑の中に見え隠れする果実の肌が、近づいていくと木漏れ日と戯れるモザイクタイルがしだいに現れます。(風袋宏幸)
建築の学生たちと、かわいくて美味しそうなバスをデザインしました。ピンクの顔とグリーンのお尻、そしてグリーンの顔とピンクのお尻の2台です。それぞれ良く見ると、10種類の小さな組マークが園児の数だけ隠れています。遠くから眺めると新緑の中に見え隠れする果実の肌が、近づいていくと木漏れ日と戯れるモザイクタイルがしだいに現れます。(風袋宏幸)